意味論としての「アナタ」
第二章で述べてみたように、第二人称代名詞に関して、特に「アナタ」について、数多くの先行研究が行われている。ひとつは尊敬する意味であり、もう一つは尊敬しない意味である。だから、筆者は辞書で調べてみた。つぎは「アナタ」に関する辞典の解釈である。『広辞苑』:「目上や同輩である相手を敬って指す語」[ 『広辞苑』、第五版、岩波書店。(電子辞書で)]『新明解国語辞典』:「自分と同等程度の相手を軽い敬意を持って指す言葉」[ 『新明解国語辞典』、第五版、三省堂。(電子辞書で)]『日本国語大辞典』:「対等また上位者に用いる」[ 孙满绪、《日语和日本文化》、(外语教学与研究出版社、2007年)P.184より。] 一方、『新選国語辞典』(小学館):「普通目上に使えない」[ 孙满绪、《日语和日本文化》、(外语教学与研究出版社、2007年)P.184より。]『外国人のための基本用例辞書』(文化庁):「聞き手を指すのに、聞き手が話してと同じ場合、また低い関係にある場合多く使われる。呼びかけ、妻が夫を時などに使う」[ 孙满绪、《日语和日本文化》、(外语教学与研究出版社、2007年)P.184より。] 以上の二種類の辞典の意味からみると、ほとんど「アナタ」はあまり知り合いに使わないと言える。しかし、意味で「アナタ」は尊敬する気持ちであるかどうかは言いがたい。
日常生活における「アナタ」の使い方と役割
「アナタ」の使い方が難しいのは、やはり日本の日常生活に関わるからである。
「アナタ」を使うと、微妙な距離感をもたらすことができる。そのような距離感を避けるため、日本人は名刺交換を重視する。そして、日本人は直接的に「~さん」、「~さま」をよく使うと同時に、人称代名詞を使うことをできるだけ避ける。たとえば、「わたし」を使うと、自分の役割を強調する意味があるかもしれない。こうしたら、ひょっとすると、威張るイメージを与えてしまう。
筆者はこれを証明するために、日本人の日常生活を通じて考察してみたい。
日本では、普通の相手について、例えば、友達や親戚などに対してわざと第二人称代名詞を使うのは少ない。筆者は日系企業で研修するとき、日本人の同僚に「いつわざとアナタを使うか」という質問をしてみたが、「やはり、普通は使わないが、次の三種類の場合に良く使う」という回答を得た。それをまとめてみると、以下の結果が得られた。
甘える時(たとえば夫婦の間、「アナタ」を使うと、関係が柔らかになれる)
いやな感じを表せる時(たとえば人と喧嘩している時、「あなた、何を思うの」と言い、わざと「アナタ」使う)
尊敬する時(例えば、初めて会う時、名前が知らないお客様に「アナタさま」を使う)
ここまで、第二人称代名詞の「アナタ」の役割は気持ちを表すために使うと思われる。
中国語と比較して考察
中国語の第二人称代名詞と比較すると、同じこともあれば、違うこともある。そして、筆者は中国語のそれを踏まえて、「アナタ」が使われる場合の気持ちを探ってみたい。
まず、中国語の〔您〕が敬意を表すことができるが、同じように、日本語の「アナタ」を使うと、相手との距離感を与える可能性もある。たとえば、刑事が容疑者を問い詰める時とか、お客様に会う時とか、馴れ馴れしいイメージを絶対に与えるわけにはいかない。その時、名前を知っても、「アナタ」を使う傾向がある。
そして、中国語の〔你〕があの距離感の意味ではなく、知り合い同士もよく使いあう。一方、怒る時、嫌がる時にも使う。同じように、日本語の「アナタ」はこのような意味もあるが、夫を呼ぶ場合以外、ほとんど冷たい感じを相手に与えてしまう。やはり、距離感を与える。
上記の内容を見ると、「アナタ」は距離感ということを与える可能性があるといえる。しかし、中国語の文法のため、中国人はあまり相手の名前だけ呼びません。だから、中国人は第二人称代名詞〔你〕、〔您〕をよく使う。
日本語の第二人称代名詞に関する一考察(六)由毕业论文网(www.huoyuandh.com)会员上传。